序ノ章

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将軍は鶴と花の描いてある金箔の綺麗な箱を開け、妖しく光るビー球くらいのものがはめてある腕輪を取り出した。 家臣モモチの手錠を壊すと、モモチは腕輪を嵌めた。       モモチが嵌めると珠はさらに光を増した。     「将軍殿、こちらへ」 「お前が行け!」 「…」     家臣の額に青筋が浮かび上がってきた頃だ、そろそろ慎重に交渉しなければならない。       「珠に手を翳(かざ)し、娘殿を頭に思い浮かべよ」 「うむむ…」     娘の無事と帰還を願う一心で力みすぎている将軍の手の上にモモチは細長い指を添えた。 珠が徐々に透明になり、将軍の娘らしき姿が見えた。     「これが、将軍殿の娘か。」 「おお、少し成り果てているが…これはどこを映しておるのだ…」 「…篠原を呼んでいただきたい。奴に調べてもらう。」 「わ、わかった」       まもなく、モモチよりは一回り若い青年がやってきた。 将軍とモモチへ挨拶を済ませると、珠に映る時代を見て言った。     「モモチ殿、言うまでもなくこれは未来ですね。娘様についている犯人の微かな妖気から時代を換算すると…おおよそ200と50年後です。」 「ふむ、篠原にはまだ世話になりそうだな」「…そのようですね、まだ年代を特定出来そうなので、その間にモモチさんはお支度をなさって下さい。」 「かたじけない。では将軍殿、しばしお時間を。」 「うむ、よいぞ」 「待て、そう言って逃げる気だな!」     家臣が引き止めようとした時には既にモモチは渦巻く煙を残して消えていった。       「これは…モモチさんも気付いておられるだろうか…」       篠原は揺らめく光をじっと見つめながら呟いた。
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