序ノ章

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調べが終わり、将軍は疲れたのか、深く息をつき、篠原は何か考え事をしているようだった。 それから十数分後、音もなく襖が開いた。       「お早いですね、もう準備なさったのですか。」     篠原が光の消えた珠に目を向けながら独り言のように言うと、家臣は驚いて振り返り、将軍は、気付いていなかったが、冷静にゆっくりと顔を上げた。     「…失礼。殿の御前であるのに煙で登場しては無礼かと思い…」 「フン、よく言うぜ。」     肝の冷えた家臣が小声で吐き捨てるように言った。 モモチは極めて軽装だった。     「これモモチ。このような準備で万事尽くすと申すか。」 「忍は…機動性を重視します故」 「心配ございません。モモチさんの行く先は今より物資が多く、入手も容易と出ています。詳しくは、私にも存じませぬが…」 「そうであるか…」       篠原には娘についている妖気からは半径数十メートル見渡すことが可能であった。判断力にも長けているので、これはあくまで仮説であったが、モモチは篠原の知力を信頼している。   モモチが再び腕輪を嵌めると、珠が強く光だした。     「では…」 「待ってくれ、モモチ…これを…娘に会ったら、渡してはくれまいか。」       漆の塗られた台の上に乗せられていたのは、一本の巻物だった。       「娘…お里への手紙だ。」 「承知仕う奉った。」 「モモチさん、未来は未知です。…お気をつけて。」 「将軍様のためだ、お前の無事を、祈ってやるよ!」 「頼んだぞ、モモチ!」       皆の願いを受け、時空忍者モモチ       「いざ」         ――――――未来へ。
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