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六階建ての隅には縦長の、目に留まりやすい赤のゴシック体文字が書かれた看板があった。
"篠原"の文字はどこにも書かれていなかった。
『よい子ゼミナール』と呼ばれるこの建物は、どう考えても民家には見えなかった。
しかし、ここは未来であるから生活様式が変わっていてもおかしくないと考えたモモチは、入るか入らないか思い悩んで、しばし様子を見ることにした。
そもそも昔の忍者が、この世界に受け入れられるのかさえ、わからなかったから、容易に人前に出ることはできなかった。
日が沈み、窓の中の光景に動きがあった。
この時代は日が沈んでも等間隔に置かれた白い明かりが小さな太陽の列のように隙間なく闇を照らしている。隠密行動はより慎重に行わなければならなかった。
やがて、何人かの生徒達が建物から出てきた。
モモチはこの時代の手掛かりを、その中の、一人の少年に目をつけた。
『篠原 小次郎』
少年の持っている学校指定カバンの札にはそう書いてあった。
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