2人が本棚に入れています
本棚に追加
少年が友達と逸れるのを見計らい、そして、素早く少年の目前に立った。
「待て」
モモチの言葉に少年は驚いて止まったが、この時代に夜中忍者の格好で少年を呼び止めるのは不審者極まりなかった。
「な、なんですか」
警戒を示しているが、なんとか応じた。
声が江戸の篠原にそことなく似ている。
「お主、篠原の人間であるな?拙者はモモチと申す」
「なんだよいきなり…」
江戸篠原の名前を知っているかと尋ねてみた。しかし、
「は?知りませんよ。」
喋りながらも少年はカバンから携帯を取り出し、操作し始めた。
「知らぬ…だと。では、篠原違いか…。先程の建物に他に篠原という者はいるか?」
「なんでそんなこと聞くんですか、塾には人いすぎてわかりませんよ」
「塾…。塾の主の中に篠原という者は…」
「塾長はシノハラじゃありません、教師も多分違います。」
(篠原め…)
次々と奇っ怪な質問をされ、少年は眉をひそめてしかめっ面をした。目上の人に対するような話し方は慣れていないらしい。
「ってか欲しいのは身代金?それとも、言いたくないが、アレ?」
「"アレ"とは」
「俺の口から言わせる手かよ!?(今の変出者はわかんねえな…)」
おかしなやりとりは続き、お互い困惑していた。
(人違い…否、奴は篠原の顔に似ている。苗字も篠原、間違いのはずは…)
(なんだよこのオッサン…忍者の格好とか、秋葉原の電波か…??)
ズレ始めた会話はやがて二人の間に静寂をもたらした。
その時、篠原少年の後ろから、大きな光が近づいてきた。
二人の周りを昼のように照らす2つの目のような光は、少年の直前で止まると、右側が開き中から人が出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!