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*・*・*
『んん……』
「あ、ハク!」
重たい瞼をうっすらと開かせると、目の前には見慣れた笑顔が咲いていました。
『かぐや……様……』
「うあぁ、なんて弱々しい声……。本当にごめんなさい……」
申し訳なさそうに頭を下げるかぐや様。ええと、ここは……彰のお姉様の部屋ですか。確か私は座敷で黒陽と話をしていて、それから……。
『かぐや様、私は一体……』
「あぁ、まだ起きてはいけませんよっ!」
体を起こそうとすると、すかさずかぐや様の手が伸びてきて私を制止させました。仕方なく、また横になりかぐや様を見上げます。
「ハクは、座敷で急に倒れてしまったのです。彰がここまで運んできてくれたのですよ」
『……そうですか……』
「あの、ハク?」
『はい』
おずおずと私の顔を見つめて、かぐや様は体を小さくさせて言いました。
「まさか、倒れてしまう程変化が大変だとは知らなくて……。本当に本当にすみませんでした……」
そのさくらんぼ色の唇から零れたのは、そんな謝罪の言葉でした。あぁ、さっきの「ごめんなさい」もそのことですか。
『いいんですよ、かぐや様は気になさらなくて』
元々の原因をたどれば、自業自得ですしね……。
「うぅ……」
そう言ってもやっぱりかぐや様は責任を感じているようで、よく分からない唸り声を上げました。いつものかぐや様なら、「あ、目が覚めました? 良かった、平気そうですね。じゃあご飯にしましょう!」とか言いだしそうなのに、どうしてこんなに気にしているのでしょう?
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