貝殻とペンダント

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「あ、そうだ!」 かぐや様は何か思い出したらしく、ぱんっと手の平をあわせました。 『どうしました?』 「彰がですね、ハクのためにお粥を作ってくれたのですよ!」 『……はぁ、お粥ですか』 「彰の手料理を食べれば、きっと元気一杯になれますよ!」 確かに彰は料理上手ですからね。昨日のホットケーキも今朝のハムエッグもとても美味しかったですし。恐らく、私の体を心配して作ってくれたのでしょう。その気持ちは大変ありがたいのですが……。 『申し訳ありません。今はちょっと食欲がないのです』 そう言うと、かぐや様は残念そうに眉を下げました。本当に、この人は感情がすぐ顔に出ますねぇ。 「そうですか……。食欲がないなんて、ハクは今三途の川の真ん前にいるのですね」 『それは寝込んでいる者に言うべき台詞ではないし、“食欲がない人は死ぬ”という考えはかぐや様の中でしか通用しないので今すぐ改めてください』 「食べたくなったらいつでも言ってくださいねっ」 シカトですか。 『……はぁ、もういいです。ところで彰は? キッチンですか?』 「いいえ。お粥を作り終わった後、お夕飯の買い物に行きました」 小さく首を振って、かぐや様がそう答えました。
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