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「かぐやは座って大人しくしてて!」
「なんですか、そのかぐやが大人しくないみたいな言い方!」
「鏡を見てごらん? 鼻息を荒くして言語理解能力の衰えたお姫様が写ってるから」
『ふ、2人とも……。話を聞いてください……』
かぐやの攻撃にダメージを受けたハクの弱った声が、僕とかぐやの口論を制止させた。
こ、ここはひとまず引いて、ハクの話を聞こう……。
かぐやもハクに従い、素直に自分の席へ戻った。
『ゴホン。では、改めて……。いきなりではありますが、今晩私とかぐや様は月に帰ろうと思います。かぐや様がここへ来た目的である“観光”“気晴らし”“家出”の3つはもう果たせたでしょう?』
「う"……。そ、そうかもしれませんけど……。でも、でもかぐやはまだここに居たいですっ」
悲痛な面持ちでそう言うと、かぐやは再び席を立って部屋を飛び出していってしまった。
「か、かぐや……!」
かぐやが出ていって数秒後、2階からバタンッという勢いよくドアの閉まる音がした。たぶん、姉さんの部屋に駆け込んだんだろう。
『……はぁ』
小さく、ハクがため息をつく。
「ねぇハク、どういうこと?」
『なにがです?』
真っ白な子猫が金色の瞳を僕に向けた。かぐやが地球に来た目的はその3つだけれど、ハクは違う。ハクの目的は、かぐやの運命を元に戻すことだったはずだ。
「まだ、かぐやの運命は戻せていないよ。なのに、帰るって……」
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