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「だって、月がかぐやの居るべき場所でしょう? 確かに月はかぐやにとって嫌な場所なのかもしれないけど、かぐやが月のお姫様であることはどう頑張っても変えられない事実なんだから」
「別に、かぐやが居なくとも月は成り立ちます」
こりゃ、帰ることを心底嫌がってるな。束縛された生活って、きっと相当辛いものなんだろう。僕は経験したことないからよくは分からないけど、ずっと家の中に閉じ込められてたらさすがに気が狂いそうだ。最も、かぐやの屋敷は僕の家とは比べものにならないくらい大きいんだろうけど。
「月が成り立ったとしても、かぐやが居ないと困る人がいるでしょう?」
「いませんよ、そんな人」
驚く程の即答っぷり。もう少し考えようよ……。
「あのねぇ、それはかぐやの思い込みだよ。そこに居るべき人がいなくなるのって、残された側にとっては凄く辛いことなんだから」
「そんなこと……っ!」
かぐやが勢いよく跳ね起きてなにか言い掛けたけれど、そのまま固まってしまった。
「かぐや?」
振り向くと、かぐやは申し訳なさそうに目を伏せていた。
「そっか……。彰は“残された側”なんですね」
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