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少し震えているようにも聞こえるかぐやの声。その言葉で、かぐやの本当の思いが分かったような気がした。
きっと、かぐやは恐いんだ。ホットケーキを作っているときに聞いた話からすると、お父さんは仕事の方──というか国を立て直すのに忙しくてあまりかぐやに構えていない。お母さんの話は聞いていないけれど、恐らくお父さんと同様、慌ただしい日々を送っているのだろう。
だからもし、両親が仕事に手一杯で自分のことを案じてくれていなかったら、と考えると、恐いんだと思う。
勝手に家を飛び出しておいてそんなこと考えるのも身勝手かもしれないけど、僕の話を聞いてそんなふうに思ったのかな。
「うん。きっと、凄く心配してるよ。自分の子供を心配しない親が何処にいるのさ」
なるべく優しい声で、かぐやの不安を少しでも拭えるようにそう言った。
さっきまで家に帰るのをずっと拒んでいたけれど、これで帰る気になってくれたかな?
僕は自分のこの境遇が嫌いだったけど、今役に立てたのならそれで良かったかも、と思う。
「…………分かりました」
少しして、かぐやは僕の肩からおでこを離し、今度はしっかりした口調で答えた。
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