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「彰の話を聞いて、もしお父様達が心配しているのなら早く帰ってあげなければ、という考えに変わりました」
……なんで上から目線なの? ちゃんと僕の話聞いてた?
「もう少しここに居たかった、というのも本音ですが、ハクの言う通り今晩月に帰ることにします」
おぉ、やっとその気になったか。これでかぐやの運命を元に戻すというハクの願いを叶えられる。
「彰?」
「ん?」
呼ばれて振り返ると、そこには藍色の瞳を凛と輝かせるかぐや姫。
「さぁ、朝食の続きを食べに行きましょう!」
そう言うと、かぐやはベッドからぴょんっと飛び降りてさっさと部屋を出ていってしまった。
不安が消えて、帰る決心もついたらすっかり本調子に戻ったみたい。まぁ、陰気なかぐやよりも食い意地はってるかぐやの方が全然いいけど。
「でも、今夜で、お別れか……」
やっと自分の耳に届くくらいの小さな声で、ぽつりとそんな言葉が漏れた。
「お別れ……。ああぁー! 今度は僕が陰気になるっ!」
もうこの話題ダメだ!! 涙腺がぁぁ!
「よしっ、秋刀魚の続き!」
悲しみを振り払って、僕は頭の中を秋刀魚一色に変換してからかぐやの後を追った。
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