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「彰、どーぞっ」
「…………」
昼下がり、リビングでくつろいでいる僕の目の前に差し出されたのは、この世のものとは思えない異臭を放つ黒焦げの物体だった。
「何、これ……」
読んでいた漫画でさりげなく鼻をカバーしながら、そう尋ねた。リビングがこの異物の匂いに支配されてるんだけど……。
「マドレーヌです!」
と、かぐやがにっこり笑って答える。いやいや、それはどう考えてもマドレーヌじゃないよ? マドレーヌって黄色だよね? それ黒だよね?
「かぐやが一生懸命作ったので、食べてください!」
「ちょちょちょちょー!! やめてそれ以上近付けないで死ぬ!!」
「死んでしまう程美味しそうということですか? もう、照れるじゃないですかー」
「誰か助けて殺される!!」
かぐやはマドレーヌ(?)が乗ったお皿を押し付けてきて、僕はとうとう壁まで追い込まれてしまった。か、核兵器がすぐそこに……!! いやあぁぁ!!
『──こら、かぐや様』
もうダメかと思ったその時、足元から聞こえた救いの声。その声の主は、勿論ハクだ。
「あ、ハク」
『なにをしているのですか』
「ハクぅ~!!」
僕は隙をついてかぐやの魔の手から脱出し、ハクの隣へ避難した。あぁ、ハクが神に見える!!
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