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*・*・*
「そういえばハク、今日は外に出て平気なのですか?」
『ええ。大丈夫ですよ。安心してください』
「よかったっ」
ハクの言葉に安堵したようで、かぐやはふわりと微笑む。やっぱりまだ昨日のことを気にしてるみたいだ。ずっとハクの体調を気に掛けてるし……。
ハクは心配されて嬉しいような、何度目か分からない質問をされて呆れているような不思議な表情で僕の左隣を歩いていた。
昨日と同じルートを進んでいるけど、出会うのは数人の人間だけで、犬も猫も見当たらない。何処にでもいるカラスさえ、まだ一羽も目にしていなかった。いつもある物も、探しているときに限って出てこなくなっちゃうんだよねー。
『……で、目標はどうやって見つけ出します?』
ふいに、ハクが僕を見上げてそう言った。
「あぁ、そういや考えてなかったなぁ。どうしよ」
『こちらは相手の素性を全く知りませんしね』
あれ、ちょっと待てよ? 冷静になってみると、僕らがやろうとしていることは結構無謀なのかな? ──いや、“結構”じゃない。“明らか”に無謀だ……。 さっきはもう夢中だったからすぐに見つかるような気さえしていたけど、それは完全に間違いだ。
「だいぶマズいね……。見つけるのって可能なのかな?」
「彰!」
一気にネガティブ思考になって力なく言うと、今度は右隣から元気な声がした。
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