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*・*・*
「……来ないね」
『……来ないですね』
「……来なあぁぁーいっ!!」
マドレーヌを仕掛けて数時間。空の色はオレンジ色から青へと少しずつ変わってきていて、空の上では「カァーカァー」というお馴染みのカラスの鳴き声が響いている。
地面に広げた包み紙の上にマドレーヌを置き、少し離れた3人入れる程の大きめな茂みに隠れてその様子をじっと見ていたんだけど、目標が現れる様子は全くない。
「ちょ……かぐや落ち着いて……」
「なんで誰も来ないのですか!? すぐそこにはご馳走があるというのに!」
ご馳走、ではないけどね……。頭上を飛び回ってるカラス達も全然降りてこないし、やっぱりこれの恐さが分かるのかな?
「もう、今日は帰らなければならないのに! 最終日を有意義に過ごせなかったら一生恨みますよ!」
……誰を?
『そういえばかぐや様、どうしてマドレーヌを持ってきたんですか?』
かぐやの怒りを少しでも紛らわそうとしたのか、ハクがそう尋ねた。
「冒険の途中で小腹がすいたら、食べようと思って。彰とハクにもあげるつもりだったんですけど……」
た、食べるはめにならなくてよかったー!!
安堵のため息を同時にする僕とハクだった。
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