145人が本棚に入れています
本棚に追加
「こ、黒陽……なにしてるの?」
僕は茂みから出て黒陽の傍に駆け寄って尋ねた。かぐやとハクもそれに続く。
『なにって、お食事してるの』
口をもぐもぐさせながら、ケロッと答える黒陽。心なしか、その表情は幸せそうに見えた。
『お食事って、ソレをですか?』
『そうだよ。白幻も食べたい?』
『遠慮します』
と、ハクは即答。当たり前だけどね。
しかし、あのマドレーヌをあんなに美味しそうに食べるなんて……。どうやら黒陽は相当重症な味音痴のようだ。
『俺ってば食料を何も持たないで月を出てきちゃったからさ、腹へってしょうがなかったんだよねー。そしたら幸運にもこんな所に食べ物があって、思わず飛び付いちゃったよ』
他のマドレーヌも次々に口へ放り込みながら、黒陽は「得しちゃった」みたいに話す。
「へ、へぇ……。良かったね……」
他に言葉も見つからないのでそう言うと、僕の隣でかぐやが声をあげた。
「黒陽! それ、かぐやが作ったんですよ!」
『えぇ!? そうなの!?』
黒陽はびっくりした様子で、残りのマドレーヌとかぐやを交互に見比べた。
『知らなかったなぁ、かぐや様には料理の才能もあったのか。帰ったら国王様にも作ってあげなよ。きっと喜ぶよ』
「はいっ!!」
あぁ、気の毒な国王様……。貴方の娘さん手料理は、きっと貴方の命をついばんでいくでしょう。
最初のコメントを投稿しよう!