自分と他人

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「こ、黒陽……なにしてるの?」 僕は茂みから出て黒陽の傍に駆け寄って尋ねた。かぐやとハクもそれに続く。 『なにって、お食事してるの』 口をもぐもぐさせながら、ケロッと答える黒陽。心なしか、その表情は幸せそうに見えた。 『お食事って、ソレをですか?』 『そうだよ。白幻も食べたい?』 『遠慮します』 と、ハクは即答。当たり前だけどね。 しかし、あのマドレーヌをあんなに美味しそうに食べるなんて……。どうやら黒陽は相当重症な味音痴のようだ。 『俺ってば食料を何も持たないで月を出てきちゃったからさ、腹へってしょうがなかったんだよねー。そしたら幸運にもこんな所に食べ物があって、思わず飛び付いちゃったよ』 他のマドレーヌも次々に口へ放り込みながら、黒陽は「得しちゃった」みたいに話す。 「へ、へぇ……。良かったね……」 他に言葉も見つからないのでそう言うと、僕の隣でかぐやが声をあげた。 「黒陽! それ、かぐやが作ったんですよ!」 『えぇ!? そうなの!?』 黒陽はびっくりした様子で、残りのマドレーヌとかぐやを交互に見比べた。 『知らなかったなぁ、かぐや様には料理の才能もあったのか。帰ったら国王様にも作ってあげなよ。きっと喜ぶよ』 「はいっ!!」 あぁ、気の毒な国王様……。貴方の娘さん手料理は、きっと貴方の命をついばんでいくでしょう。
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