145人が本棚に入れています
本棚に追加
『……ところで黒陽、一昨日、彰の家に行きましたか?』
と、ハクが尋ねると、黒陽は最後の1つを口に運びながら答えた。
『うん、行ったよ。少年に紙を渡しに。でも厳密に言うとあれは昨日だね。12時回ってたもの』
『いえ、それではなくて。もうちょっと前です』
『もうちょっと前……?』
首を傾げ、1つ1つ記憶を遡っていく黒陽。
『えーと、一昨日は確か夕方にこっちに来て、その後食べ物を探して三千里歩いて……』
三千里だって? 一里は約三.九㎞ですが……。
『あ、そうそう。で、そのうち公園に出たんだ。そこに二羽のカラスが倒れててさ、そいつらの前に丸くて平べったくて甘ーいデザートが落ちてたの。俺は迷わず噛み付いたね』
そのデザートの味を思い出したのか、幸せそうに顔をほころばせる黒陽。
おそらく、黒陽の言うデザートはかぐやが作ったホットケーキに間違いないだろう。形的にもぴったりだし、甘くて、カラスを倒す程の威力を持ってるデザートなんてそれしかない。
きっとその二羽のカラスが庭からホットケーキを公園へ運び、さぁ食べよう! と口に入れた瞬間悲劇が……みたいなノリだろう。
チラリとハクに目配せすると、ハクは僕の目を見て小さく頷いた。たぶん僕と同じ考えなんだろうな。
最初のコメントを投稿しよう!