初夏の風鈴

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    大学の図書室。 毎日たくさんの人で溢れる大学の中で唯一静かな場所。 朝一から授業がなくても毎日ここに訪れるのが俺の日課だ。 季節は初夏。 今日も俺は窓際の席に座り、風鈴の音色を耳に受けながら過ごしていた。 朝から吹く弱い風に揺られた音色は、少しの眠気を誘うほどに心地好い。 もうこの図書室の窓際の席は俺の特等席になっている。 一年以上座っている為か誰もここには座らないからだ。 平凡な日常が一番良いよな――なんて思いながらまた一日を過ごす。 今日そんなにのんびりしていられないのを思いだし、最近買ったばかりの小説に栞を挟んで時計に目を向ける。 やべっ。 そろそろサークルの集まりがある時間だ。 遅刻厳禁だし急がないとヤバい。 せっかくの憩いの時間に名残惜しさを感じながら、俺はバックを手に持ち図書室を後にした。    
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