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「…うん」
まだ裸の体に遥季自身の上着をかけてやりながら、アパートへ向かった。
「入れよ」
玄関を開けて先に部屋に入るように促し、照明を点けた。
おずおずと靴を脱ぎながら、躊躇うように部屋へ一歩踏み出した所で遥季が振り向いた。
「一人暮らしなの?」
「ああ。家族は居ないに等しいからな。今のところ一人暮らし」
「あ、ごめんなさい……」
気まずそうに視線をそらしたから、こりゃあ天涯孤独とか思われたに違いない。
「親は生きてるぜ。ただ、どっちも海外にいてさ、デカい家に俺一人いてもなんだし、アパート借りた方がいいからって理由での一人暮らしだからいちいち暗い顔すんなって」
「そうなんだ」
暗い顔から少し安堵の表情になってはにかむように笑った。
俺の両親はそりゃあもうピンピンしていて、傍に居ると正直ウザイ位だ。
親父とお袋は各々仕事で海外にいる。親父はアメリカでの海外長期出張。お袋はピアニストで今現在は多分、フランスあたりに居るはずだ。
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