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「そこに座っとけよ。とりあえず手当てしないとな」
ソファーに座るように言って、俺は手を洗浄し、たまに世話になる救急箱を取り出した。
まずは、唇から。
「しみるぞ」
ガーゼとコットンに消毒液を浸して、ピンセットで切れた所を消毒していく。
時折、しみて痛いのかビクッと遥季の体が反応するが、黙って耐えてくれてる。
大きな傷はないものの、小さな擦り傷だけは無数にある。
――あいつら一体何者なんだ?
「お前、あんなことよくあるのか?」
「……」
黙って手当てされていた遥季に何とはなしに聞いてみるも、またうつむいてしまった。
多分コレが初めてではないのは分かる。
遥季の右脇腹に古い傷と数日は経っているだろう鬱血した跡を見つけてしまった。
「しかし、ひでーな」
「……でも、慣れてるから大丈夫」
「は? お前、こんな事慣れるとかってどういう事だよ」
「あの……えっ、と…… 黙ってれば、大丈夫だから…」
消えそうな声でぎゅっと目をつむって少しだけ肩を震わせてる。
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