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程なくして、遥季が浴室から出てきた。
部屋に入って来た遥季を見て、俺は笑わずにはいられなかった。
着ている俺の服が全くもってサイズ違いもいいところで、素で笑えた。
「もう! そんなに笑わなくてもいいじゃない! ひどいよ」
ふくれっ面で抗議する遥季も更に面白くて、しばらくは笑いを止めることが出来なかった。
遥季は、俺に何を言っても笑うと知ると、何も言わずにソファーに座ってTVに視線を向け始めた。
「ごめん、悪かったよ。ちょっとふざけ過ぎた。…っつうかお前が悪いんだぞ」
「何でだよ。僕は言われた通りに借りた服を着ただけなのに…。文斗の選んだセンスが悪いんだ。僕は悪くない」
小学生の男の子が父親の服を着ている様なコケティッシュさと、風呂上がりの上気した顔が、より遥季の顔を幼く見せていて、とても面白かった。
「だから、悪かったって。あいにくお前に貸せる服がそんなのしか無くて、ごめんな」
「……これ以上笑ったら、僕ボロボロでも自分の服に着替えてやる!」
恨めしそうに訴える遥季もまた、可愛い。
俺は両手を胸の位置まで挙げて降参のポーズをとった。
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