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「笑わない。笑わないから、そんなにムキになるなよ」
「……だって、文斗笑いすぎ」
そう言って、Tシャツの身頃を伸ばし、膝を折ってその中で体育座りをした。
「……もう、文斗と喋らない」
ふいっとそっぽを向く。
そんな姿も可愛くて、ちょっとドキリと胸が鳴った。
そんな気持ちをごまかしながらため息をついた。
「分かったよ…。寝るならそこのドアの向こうだ。そこ寝室。俺はここで寝るから」
部屋の入り口から見て右側にあるドアを指差して教えてやりながら、謝る気持ちを笑顔に乗せた。
「……」
本当に喋らないつもりだな。
また可笑しくなったが、口元に握った手を当てて笑いをこらえた。
「答えなくていいから、そっちの部屋で寝ていいよ。おやすみ。明日は俺、ちゃんと送っていくから、帰りたくなったら起こして」
明日は学校が休みで、バイトはいつも通りの遅番だから少しはゆっくり眠れるかな。
おずおずと寝室に入っていく遥季の後ろ姿を眺めながらそんな事を思った。
時間がきになって、座っているソファーから上体を反らし時計を見ると、既に夜中の2時も過ぎている。俺もシャワー浴びてサッサと寝よう。
今日は色々ありすぎたような気がする…。
普段拾わないもんまで拾ってきちゃったし……。
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