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「文斗~。ちょっと待って~」
自慢の愛チャリの鍵開けしてたところに、花岡チーフが大声で俺を呼び止めた。
花岡チーフ。下の名前は文子。
俺と一文字違いって事で仲良くしてもらってる。25歳。
今が 華 なお年頃だそうだ。
「どうしたんすか?」
カチャっと鍵が開く音を聞き届けて顔をあげると、文子さんが申し訳なさそうに、
「ごめん、明日は早番で入ってくんないかなぁ?早番の子、今日調子悪かったらしくて、やっぱり風邪だって今連絡入ったみたいで…」
と顔の前で両手を合わせた。
明日は土曜日だし、学校は休みだ。断る理由もない。
「いいっすよ。文子さんのおごり付きで」
ニヤケながら言うと、
「ああぁーっもう!いいわよ、おごるから。明日7時半ね。頼むよ。
ちなみに、あたしも早番だから」
こちらもニンマリ笑顔でかえされた。
「えぇ!?文子さんも早番すか?たまには鬼のいない楽な仕事したいっす~」
「言ってくれるね~。明日は容赦しないわよ!ビシバシ、しごいてやる!」
こんな会話が仕事の疲れを癒やしてくれる。
文子さんは美人な上に人なつっこくて、しかも仕事のできる大人の女って感じ。
普段は姉ちゃんみたいに接してくれる。
「じゃ、文子さん、また明日、よろしくッス」
かるく挨拶して、チャリンコを滑らせた。
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