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「おい! 石っころ! てんめー! どこ行きゃがったんでぇ!」
硝煙と土埃と砂埃が舞い上がる。
爆音と悲鳴が渦巻いている、倒壊したビルとビルの狭間。
一人の小柄な少女が敢然と立ち上がった。
騒音に掻き消されないように、上空に向けて蛮声を張り上げる。
少女は、オーバーオールの残骸を張り付かせた、だぶだぶで薄汚れた、元は白かったであろう半袖Tシャツを上半身に纏っている。
オーバーオールは太腿の半ば辺りでズタズタに引き裂かれていて、日焼けした小麦色の素足を晒していた。
そこかしこに擦過傷や痣が目立つ痛々しい姿。
足元は黒いカンフーシューズのようだが、薄汚れた灰色をしている。
強(こわ)い茜色の髪は千々に乱れて腰まで流れ落ちていた。
一重瞼で白目がちの目は細められ、眉間には深い縦皺が刻まれる。
「ちっ」
舌打ちすると、再び身を屈めた。
辺りを油断無く窺うが、濛々と立ち上がる様々な煙やら埃やらで、視界は依然、不良な侭だ。
ティーンネイジャーと思しき少女は、瓦礫の合間を、膝立ちしながら進んで行く。
遠くで落雷のような轟音が絶え間無く鳴り響いていた。
風に乗って人々の悲鳴が押し寄せて来る。
埃塗れの、酸っぱくて、獣臭い、噎せ返るような鉄錆の芳香が少女を咳込ませた。
涙ぐむ。
肩で息をしながら、しゃがれ声を出して、喉の奥深く迄入り込んだ異物を吐き出そうと試みた。
そのまま、べっ! べっ!と何度も地べたに唾を吐く。
髪を掻き毟る。
「ぶがあぁあぁ!」
苛立ちも顕に少女は吠えた。
「何なんだよっ! っちくしょー!」
苛立ち紛れに叫ぶが、又直ぐに咳込んで仕舞う。
「何でこんなコトんなってやがんだっ、ったく、バッカみてー」
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