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 やっぱり、最初はこれだろうね。今、大河ドラマ【天地人】の主役、直江兼続の兜の前立てが、【愛】の一字のが有名で話題になってるけれど今年の一字に、愛 がなるように、みんなちょっと頑張ろうよ。  さて、愛で僕が思い出すものは、いくつかあるけれど、今回、真っ先に思いついたのは、小学校六年の頃の事、中学に上がる長い春休み。  僕は、1人で、祖父母の家に遊びに行った。だいたい、婆ちゃんが上野に連れて行ってくれたりしたのだけど、婆ちゃんが行けない時があって、爺ちゃんと2人、成田山へ行こうという事になった。  爺ちゃんにわがままを言って、うな重を食わしてもらったりした。  そこで、おみくじをひく。凶だった。もう一度ひく。また凶。絶望に打ちひしがれる俺に、爺ちゃんは言った。 『よし、それは全部、爺ちゃんがもらうから、もう一度ひきな』  今度は、吉だった。  たしかその年、爺ちゃんは、食道ガンで手術。麻酔の失敗で、寝たきりのようになり、約2年後亡くなった。  爺ちゃんの言葉に、深い意味はなかったかもしれない。でも、俺は、爺ちゃんのおかげで、今も生きているという事だけは、絶対忘れない。
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