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ふと、北にある大国の主が浮かんだ。村上水軍という元海賊を従える彼ならば、或いは上手い運び方を知っているかもしれない。
ただ、一つ問題があった。彼とはつい先日死闘を繰り広げたばかりである。二度目の訪問が慇懃であっても、易々と掌を返すとは到底思えない。あまりにも虫がよすぎる話だ。船を貸すどころか逆に叩かれる可能性さえある。
しかしながら、元親は北を訪ねることを即断した。豊臣が自分を拒んだのだから、毛利は必ず自分を求めると彼は半ば確信している。今という時期が、彼にとって絶好の機会だった。
信親に後を任せ、元親は一人、大きな賭けを背負って本州へと船を出した。
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