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「……なんか色々かっこいい言葉考えてたんだけど、結局ありきたりの言葉しか出てこねーんだよな」
シンの紅茶色の目が甘く輝くのを、愛は言葉もなく見返していた。
愛の手という支えを失ったドアが、背後で静かに閉まるのが分かる。
逆光の中──
照れたように、一瞬柔らかい髪の毛をかき回すのは、シンの昔からの癖で。
いたずらっ子のように、幅広の唇の端を上げる……その微笑みは、愛が一番好きなシンの表情だ。
今も、その顔をして。
シンはハッキリと言葉を繋ぐ。
「……これからの人生もずっと一緒にいたい……おまえを守るのは、オレでいたいんだ」
愛の瞳からは、重みに堪えきれなくなったガラスの玉が次々とこぼれ落ちる。
シンの瞳に目をあてたまま、愛はゆっくり首を横に振った。
「……守らなくて……いい……」
驚いたように目を見開くシン。
そんな彼の手を、愛は強く握り返して。
「ただ……隣にいてくれるだけで……それだけでいい……」
愛の言葉はただの返事ではなく。
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