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「もうシンくんっ!余計なこと言わないの!!」
声に振り返る。
そこに立っていたのは、少し怖い顔で腕組みをした愛だ。
どうやら今日は彼女も店のスタッフ、という立場らしい。
深いグリーンのミニワンピースはハイウエストに黒のベルトが効いていて小柄な愛に良く似合っている。
ボブの髪には耳の上あたりに黒の大きめコサージュ。
整った顔の愛がそんな格好をしていると、まるで良く出来た人形のようだ。
だが、今はその人形もムッとしたような表情を浮かべていて。
「……そんなこと言ってないで、笹野くんを手伝ってよね?」
華奢なヒールでつかつかと歩いてくると、シンを上目遣いでジッと睨む。
本人は至って真剣なのだろうが、そんな2人は周りから見れば逆にひどく仲が良さげで、微笑ましい。
何よりも、いつもふてぶてしいぐらい動じないシンが、愛の前ではすっかり形無しなのだから。
「分かった分かった」
シンは降参、とばかりに両手を軽く上げると、
「じゃ、和葉、また後でな!」
相変わらず呑気な声を残して離れて行った。
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