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近寄って行くと、シンは店の掛け時計の方に視線をやりながら、
「遅くないか?」
聞いてくる。
その言葉を受けて、愛も慌てて小さいパーティーバッグに入れていた携帯を取り出した。
「そう言えば……出る時に電話するって言ってたのに、まだだね」
小さく首を傾げる愛に、シンは眉根を寄せながら、
「何か……ハプニングでもあったんじゃ」
「ハプニングって」
シンの難しい表情を見ていると、思わず愛までも同じように深刻な顔になってしまう。
「例えば……」
「例えば?」
「馬の機嫌が悪い、とか」
真剣に聞いていた愛は、それがシンの冗談だということにやっと気付いた。
ニヤニヤしているシンに向かって、小さいこぶしを上げて、
「もうっ。そんなことばっかり!」
怒った顔をする愛に構わず、シンは腹を抱えて笑っている。
「だってさぁ……超楽しみじゃねぇ?あいつ、どんな顔で……」
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