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「さぁ、もうそろそろ主役が着く頃ですからね!シンさんと愛さんは扉の前でスタンバって下さい」
言われて、2人は人々の間を通って、扉の前に足を進める。
──キャンドルの灯りでほの明るい店内。
各テーブルの上にはマカロンやプチケーキ。
リボンのように結ばれたテーブルナフキン。
やすみの好きなものばかりで彩られている。
…甘い甘い世界。
愛はそれを横目で確認しながらゆっくりと歩く。
…現実が、こんなに甘いものばかりの世界じゃないことを……あたしも、そしてやすみももう知ってる……
温かい人々の視線と軽く起こる拍手。
愛はそんな全てを見渡すようにして、扉の近くまで歩いて。
そうして、その重いドアにそっと手を添えた。
…でも……
「……愛」
ふと目を上げると。
向かいで同じように、扉に手を当てているシンの優しい笑顔。
「いいですかぁ?3、2、1で開けて下さいね~?はい、3……」
…それでも、あたしは……あたしたちは、彼女を甘い世界で迎えてあげたいって思うの……
「はい、2……」
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