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「愛」
シンが、愛の頬に優しく触れる。
柔らかい金髪に、少し幼さの残る、大きな目。
久し振りに見る彼の笑顔は、ほとんど変わっていない。
大きめの口の端を上げて、顔いっぱいで笑うシンを見ていると、幸せすぎて、切なくて。
「シンくん……」
愛の目に、大粒の涙が浮かんで流れ落ちた。
シンは、軽く身を屈めると、そんな愛の目を覗き込む。
「会いたかった……色んな女と付き合おうとしたけど、やっぱりオレにはおまえしかいねー」
真っすぐな愛情表現も、昔のままだ。
「シンくん、あたしも……あたしも」
無我夢中で、手を広げて、シンに抱きついて。
暖かい体に、力一杯抱きしめられる。
シンの体は、懐かしい太陽のような匂いがした。
…もう、絶対に離れない。絶対に……
そう、言おうとして、涙に霞む目を、一生懸命開けて……
『──当機は、まもなく成田空港に着陸致します……』
キャビンアテンダントの上品なアナウンスに、愛はハッと目を覚ました。
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