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寂しくても、切なくても、確かに4年半の月日は流れたのだ。
愛の中でも、ちゃんと整理は出来ている。
とにかく、そんな思いをしてまで、積み上げた経験とキャリアだ。
それを買ってのことだろう、かなり大手の商社から内定をもらうことが出来たのだから。
それが無駄にならないように、しっかりと仕事で成果を出したい。
そう思う。
卒業式を終えて、すぐに帰国したのも、きちんと下準備をした上で仕事を始めたかったからだ。
…今のあたしには、恋愛は二の次だ。
そう胸の中で宣言して。
何かを吹っ切るように、顔を上げた時。
「愛ちゃん!!」
懐かしい声が聞こえて。
振り返ると、嬉しそうに大きく手を振る人物が目に飛び込んできた。
「やすみ!!」
久し振りに、その名前を口にすると、彼女はますます笑顔を大きくして、こちらに駆け寄ってきた。
「愛ちゃん、お帰りなさい!」
円らな瞳を細めてそう言う彼女は、ほとんど高校時代と変わっていなかった。
細かい花柄のシフォンワンピースが、栗色の長い髪に良く似合う。
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