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同じ頃、「アーメリアル防衛大臣事務室」と書かれた扉を一人の青年がノックした。
青年はこの辺りではめずらしい黒い瞳に黒いボサボサの髪をしている。
背はすらりと高く、グレーのスーツがよく似合っている。
「入れ」
中から厳かな雰囲気を持つ低い声が聞こえてきた。
「失礼します」
中では仰々しい机の向こうで座っている60代後半ぐらいであろう老人が青年を見据えていた。
その体格はまさに筋骨隆々。
居住まいは威風堂々。
「待っていたぞ、キリサキ」
「なんの御用ですか? また何かの面倒事でも押し付けるおつもりで?」
くだけた様子で話すキリサキと呼ばれた青年。
この大臣との付き合いの長さが伺える。
「そう身構えるな。たいしたことではない」
「信じられませんね。前に呼び出された時はドラゴンの討伐を一人で行かされましたから」
そう言ってキリサキは大袈裟に肩を竦めた。
「なに、今回はそのような危険な任務ではない。ちょっと学校の先生になってもらうだけじゃ」
一瞬、キリサキが言葉を失った。
「……大臣。ついにどこかお体を壊されたのですか? 病気というものは時に人をおかしくしてしま……」
「いいから儂の話を聞け」
大臣が机の下からおもむろに2枚の紙を取り出した。
「……これは?」
そこには少年と少女の顔写真と名前、略歴や成績等が書かれていた。
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