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そんな凄まじい威力を持つ魔法が見事に命中したにも拘わらず、二人は苦々しい顔をしている。
爆炎と稲光が消えると、そこには口に火炎を貯めたドラゴンが魔法が当たる前と同じ体勢でこちらを向いていた。
自分達の魔法がたいした抵抗にならないことがわかっていた二人は、驚くことはせずただ苦虫を噛み潰したような表情のまま固まっている。
通常ならば二小隊か三小隊、つまり八人から十二人もの軍人を動員しなければ太刀打ちできない、それがドラゴンである。
彼らは一般の隊員よりも優秀だとはいえ、たった二人では足止めすらままならないのだ。
二人は期待の視線をシリウスに向けた。
自分達よりも若いとはいえ、帝国最強の十人、『二官八将』の一人である彼ならばなんとかできるのではないか、と。
しかしシリウスはただ茫然とドラゴンを眺めているだけで、何か対応する手立てがあるようには思えない。
二人に焦りの色が浮かぶ中、ドラゴンは容赦無く口から火球を吐き出した。
巨大化しながら迫る紅蓮。
焦点が合っているのか定かではないが、その高熱の球に目を向けているシリウスはまるで誰かに静止の合図を出すかのように自らの左手を掲げる。
するとシリウスに直撃するちょうどその位置で、火の玉は炸裂することもなくぴたりと静止した。
まるで素手で火を受け止めているかのようなその光景は、後ろで熱に堪えている二人には目を疑いたくなるようなものだった。
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