Sirius Jackdaw

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錐揉み回転している火球はシリウスをぴくりともぐらつかせることもできない。 一方シリウスには全く力感が無く、後ろの二人は狐に化かされたような表情を浮かべていた。 ドラゴンのブレスが自分達の魔法よりも威力が高いのは明白。 にも拘わらず、シリウスはいとも簡単に、そのからくりはわからないが、しかし確かに片腕で防いでいるのだ。 何がどうなっているのかが理解できない二人を尻目に、シリウスは火の玉を止めている左手、いや左手の五指にぐっと力を入れる。 すると、中心から渦巻くように炎が拡散し始めた。 辺りに熱風を撒き散らしながら、圧倒的な熱量を持っていた火球が広がり、そして消えていく。 呆気に取られる二人の前で、シリウスは火ブレスを完全に無効化してみせたのだ。 だが驚いたのは二人だけではない。 自らの必殺の一撃を掻き消されたドラゴンは、低く呻きながら高度を上げた。 木々を薙ぎ倒さんばかりの風圧を放ちながら、大きく羽ばたいき宙に浮く。 警戒の色を見せるドラゴンに黒い目を向け、シリウスは右手で腰の黒い剣を徐につかんだ。 そしてゆっくりと引き抜こうとしたのだが、それよりも早くドラゴンは急に悲鳴のような叫びを上げた。 大きく羽ばたき、さらに上空に逃れる。 「……野性の勘、か」 後ろの二人には聞こえない程の声で、シリウスは呟く。 「何をされたのですか?」 事態が飲み込めない二人の、右側の男がシリウスに聞いた。
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