Sirius Jackdaw

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「……弱く脆き人の心よ」 建物を見ながら、シリウスはそんな言葉を発した。 「その内にある意思を消せ」 シリウスが右手を建物に向け、手を開く。 シリウスの目には、手と建物が同一直線上に見えていた。 「そして我が意の前に伏し、我が心の前に跪け」 建物の周りの地面から、黒い霧のような靄(もや)が湧き始めた。 そしてそれはゆっくりと建物を包み込んでいく。 「我が手繰る糸の先は彼(か)の心に。従え……マスタマインド」 シリウスは詠唱を終えると、突き出している右手をぐっと握りしめる。 すると、すっぽりと建物を覆っていた靄が渦を巻き始めた。 二、三秒の間渦巻いてた靄は、やがて遠心力に吹き飛ばされたかのように消えていき、建物の姿が再び露となる。 「……他愛もない」 全ての靄が完全に消え去るとシリウスは右手を下ろし、大きく息を吐き出した。 そして今自分が魔法をかけたその建物に近づいて行く。 立方体、いや少し奥行きがあるため正確には直方体だが、そんな形の建物には小さな窓が両側面に二つずつついている。 ドアは、シリウスがいる側とその反対側、すなわち直方体の最も遠い対面に一つずつあった。 シリウスがその内の一つに近づくと、ドアは自動でスライドして開いた。 中には帝国の白い軍服を来た者が六、七人いる。 そしてその奥には、手動であろうノブが付いた扉があった。
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