プロローグ

3/6
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
「エネルギー供給が減ったせいで、唯でさえファクンダストは衰退したというのに…。改革を停止するという思想を持ち出すなど、人類を生き殺しさせる気なのか? 我等の意見に与する者はいるとはいえ、向こうは皇帝の賛同を得ている。おめおめとしていると、我らの政策が脅かされてしまう」 もう何十回も聞いた愚痴に同じように首を縦に振り、細い影はぼそりとこんな事を言った。 「密かに続けていた工業もバレてしまいましたしねぇ…。アレまでバレなければいいんですが」 そして諦めてしまったかのような溜息を吐く。 すると片方は語気を荒くして力説をし出した。 「アレだけは断じて隠し通すのだ! アレの危険性を考慮して仕上げをし、商品化すれば、あやつらとて文句は言えても手出しは出来まい。人類が頂点を極められる一歩なのだ。何故今まで通り行っていた企業開発を咎められねばならんのだ。何が自然保護だ。何が革新停止だ。そんなものは人類の毒だ! ……おお、すまない。そうだ。本来の話合う理由を忘れるところだった」 濁声は一通り喋った後、ようやくこんな暗がりにいる状況を解したようで、脱線を元に戻した。 椅子に座り直し、ぼんやりと表れている正面の人影と視線を合わせる。 「今こうして話しているのは他でも無い、人類進化の敵をどうするのか、だったな」
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!