プロローグ

6/6
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
「首都崩落は神の子によって成された」  歌うような声音だった。 「あいつは…ま、まままさかわ、私達の…!」 小男が何かに気付いたように喚いた。 立つ男の顔色が変わる。 か細い震える声が闇に広がる中、巨体の方はカーテンを思い切り開けた。 月明かりが部屋を照らし出し、全体像を浮かび上がらせた。 急いで周囲を見渡す。 だが何処にもいない。 「憎む者は幾らでもいるよ」 声だけが聞こえてくる。 …外からだ。 「そうして命じるんだ」 二人は窓に走って張り付くようにして外を見た。 そこに佇んでいた黒い影。 切り取られたように闇夜に浮かぶ顎が、嗤った。 「『神の子を殺せ』と」 それだけ言い残して、その者はすっと闇に溶けていった。 男二人は、顔を見合わせた。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!