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「首都崩落は神の子によって成された」
歌うような声音だった。
「あいつは…ま、まままさかわ、私達の…!」
小男が何かに気付いたように喚いた。
立つ男の顔色が変わる。
か細い震える声が闇に広がる中、巨体の方はカーテンを思い切り開けた。
月明かりが部屋を照らし出し、全体像を浮かび上がらせた。
急いで周囲を見渡す。
だが何処にもいない。
「憎む者は幾らでもいるよ」
声だけが聞こえてくる。
…外からだ。
「そうして命じるんだ」
二人は窓に走って張り付くようにして外を見た。
そこに佇んでいた黒い影。
切り取られたように闇夜に浮かぶ顎が、嗤った。
「『神の子を殺せ』と」
それだけ言い残して、その者はすっと闇に溶けていった。
男二人は、顔を見合わせた。
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