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今の季節は春だろうか?
そう思うぐらい夏の日の今日は心地が良かった。いや今日も、か。夏になってから暑いと感じた事は一度も無い。僕の周りの気温は年がら年中春だ。
もちろんこんな異常な自然現象が起こる訳は無く、こうなったのも目の前を鼻歌混じりに歩いている僕のご主人様に全ての原因はある。
僕のご主人様であるミユアンヌ、通称ミューはどうやら暑いのはお嫌いな様で、ご丁寧にも僕にまで適温化の魔法をかけてくださりやがった。
もちろんそれはありがたい。僕だって暑いのは嫌だ。――が、夏なのに暑くないというのはさすがにものすごく違和感をもつ。
「ねぇねぇ、シャルぅ。街まで後どれくらいかな?」
目の前を歩くミューが鼻歌を止め、こちらに振り返る。腰まである長い金髪が、太陽の光にキラキラと反射して輝く。
まだ幼さの残る顔立ちに大きな丸い碧眼。そんな彼女は首をかしげて僕の返答を待つ。その容姿や仕草だけを見ると、とても僕と同じ十七には見えない――とは、僕以外の人たち談。
「次の街までは後……半日程度だと思いますよ?」
…………あからさまに嫌そうな顔をされた。
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