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僕がミューの前で黙って腰を下ろすと「ありがとぉっ」と嬉しげな声と共に、背中に抱きついてきた。
「えへへ……楽チン楽チンだよ」
嬉しそうなミューの声が耳を擽る。位置的に笑顔が見れないのが幾分残念だ。
「どうします? 肉体強化をして一気に街まで行きますか?」
ミューは笑うのを止め、首をぶんぶんと横に振る。髪の毛が首筋に当たって擽ったい。
「ダメっ。ゆっくり行こう?」
首に巻きつくミューの腕に力がこもる。
嬉しかった。
ミューが僕の事をどう想っているかは知っているし、僕だってミューと似たような感情を持っている。
だから、僕も二人だけの時間をゆっくり過ごしたかった。――たかったのだが、それは無理なお願いのようだった。
遠くからは何やらエンジン音が聞こえてくる。まだ離れているからよくは分からないが数は複数のようだった。目を凝らして見ると、砂ぼこりを巻き上げながら三台の魔動ジープが此方に向かってきていた。
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