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「旦那様、近藤です。
大変恐縮ですが、
少々宜しいでしょうか。」
旦那と呼ばれる
万那瀬 克也は、近藤と
いう使用人が遅かれ早かれ自分を訪ねてくる事を予測していた。
克也は近藤を部屋に通した。
「いつまであのような事を続けさせるおつもりですか。羽音様のお友達とはいえあまり傍におくのは如何かと。
もうすぐ水無月様との婚約の件もございますし。」
克也は意地の悪いような
笑みを浮かべながら片手に持つ杯を一気に飲み干した。
「近藤、私は万那瀬グループの現社長であり、羽音の父親だ。
羽音は次期社長になり様々な他社との関係を築き上げていかなければならない。
あいつは天才だ。
会社の将来を支えるのに、本当に申し分ない。
だから今だけは、
自由にさせてやるのさ。
もう少しだけな…
明日は水無月さんご夫妻と羽音の婚約者である水無月 若葉さんがいらっしゃる。当然だが失礼のないようにな」
風が吹き荒れ始めた。
月は闇に飲み込まれ、闇一色に染まる。
静かに波はもう目の前まで押し寄せてきていた。
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