一章

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夢をみた。 僕が初めてまひるに出会った時の夢。 「すみません、 回覧板です!!回覧板!!」 庭で僕と同い年ぐらいの子がインターフォンも押さずに叫んでいた。 僕はバイオリンの稽古を 中断し傍に行った。 「どうもありがとう」 「聞かせて」 「え…?」 「バイオリン、なんか 弾いてよ!」 彼女は目を輝かせていた。僕は戸惑いながらも自分で作曲したものを一曲弾いた。 弾き終わり彼女を見ると、目を真っ赤にして泣いていた。 「切ない曲、歌詞はないの?」 「歌詞はないよ、イメージは眠りの森の美女だけど、結局王子様は姫に会いに行く途中死んでしまうんだ。だから姫も一生目を覚ますことはない。」 「悲しいね、悲しいね」 彼女は本格的に泣き初めてしまった。 「でも二人は天国で会えるよ、絶対!! だって 好き同士なのに離れ離れなんて嫌だもん!!」 そうか。 どうして僕はこの時君に 心を開けたのか。 きっと君のそのひたむきな明るさと強さに惹かれてしまったからなんだ… 「そうだ、この曲の続き 作ってよ!!ハッピーエンドで終わるように!!ね?」
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