一章

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しばらく過ぎ、最初に口を開いたのはまひるの方だった。 「羽音、冗談でしょ。 私たち今16歳だよ? 結婚なんて簡単に 言っちゃいけない。」 心に淋しさが募った。 まひるの言い分は当然の事で、自分は何を考えているのかと自嘲せざるをえなかった。 「それもそうだな。 でも、そのおじさんの所は出て僕の家に来い。」 まひるは僕の言っている 意味が分からないのか 小さく首を傾げた。 僕はそっとまひるのブラウスの袖をめくりあげた。 「あ‥」 まひるはようやく気付いたようで罰の悪そうに僕から目を背けた。 「辛いんだ、知ったからには、放っておけない。 うちに来て。嫌だって 言っても絶対連れてく。」 まひるはしばらく僕の顔を眺め小さく頷いた。 僕は腕を引いて彼女と一緒に、あの家に帰った。
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