一章

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家に帰ると騒動しかった。万那瀬一族の金目当てに羽音誘拐を実行したのではないかなどといらん心配までに発展していたようだ。 「父さんはどこにいる」 書斎ですと使用人が 答えた。そして僕の後ろに居るまひるをじっと見つめた。 きっと通していいものか 疑っているのだろう。 「彼女は僕の友達だ。 父も知っているから 通しても問題はないから」 見透かされ驚く使用人の 前を過ぎ僕たちは 書斎に向かった。 ノックすると、入りなさいと短い返事が返って来た。父は僕とまひるに腰をかけるよう声をかけた。 まひるの顔は少し 強張っていた。 僕は安心させるように まひるの手をにぎりしめた。 「今日は突然の無断外出すみませんでした。 こんな事しておいてなんだけど、父さんにお願いがあります。 まひるをここにおいて下さい。お願いします」 僕は深々と頭を下げた。 まひるもつられるように 頭を下げた。
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