一章

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部屋につくなりまひるは使用人の川井に後でこの家の仕事を教わりにいくと告げていた。 「まひる、僕は家の使用人にしたくて連れてきたんじゃない。 変に気を使わなくていいよ」 「駄目。私家事好きだし、お世話になる身として自分から望んでるの。 いくらかしこい羽音の意見でも聞き耳もたないからね」 まひるは相変わらず 威勢がよくて、しっかりしていて、ちゃんと自分を 持っていて、小学生の頃と何も変わっていない。 ただ、それだけなのに凄く嬉しい。 「ハハ、まひるは相変わらず変わってないな。気持ちなら、そこらの男より、たくましいよね」 笑いかけた筈なのに、 まひるの顔は笑ってはいなかった。 むしろその何かを射ぬくような強い視線に目を離せなくなった。
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