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『あぁ、ペンギンお嬢様、お珍しい、お一人でございますか?』
『うん♪実はドレスじゃないんだけど、どうしても作ってもらいたいものがあって。前にお母様がオーダーしたと思うんだけど、色違いで作って欲しいの。』
『あぁ、ペンギンフルスーツでございますね。奥様は薄い水色でしたが、ペンギンお嬢様は何色になさいますか?栗色の髪に翡翠色の目には何色が合いますでしょうかね。』
と、店の主人は様々な布を取り出し、ペンギンに合わせていく。
普通、こんなオーダー、老舗のオーダードレス店なら、
怒り狂って門前払いだが、
にこやかに、なごやかに、嬉しそうに主人が対応しているのは、
やっぱり先祖代々昔からの付き合いと、ペンギン家の権力はもちろんだが、
単に、慣れであろう。
『今はお寒いので、中は綿入りがよろしいですね。シルクの綿が丁度在庫にありますのでそちらを使いましょうか。』
主人はテキパキとペンギンのサイズを測り、メモしていく。
『ぺんたんね~、ピンクがしゅきなの~。』
と、主人と話すのが懐かしく子供の頃の口調がつい出てしまう。
『存じ上げております。子爵様とお越しになってた頃、ピンクのドレスのオーダーが一番多かったと記憶してございます。妹君は別の色を!と何時間も考えてございましたね。こちらのベルベットの薄いピンクか、ちょっとはっきり目のカシミアのピンクがお似合いかと思いますが。』
『ううーん、じゃ、こっちの濃い色に!目立った方が後々いいの♪妹で思い出したけど、ハバネロ農園に修行に行ってるALBAROSA(以後あ~ちゃん)は元気にしてるのかしら。農園じゃドレスって訳にもいかないし、動きやすいと噂のジャポネのモンペを薔薇柄で作って送っていただけないかしら。』
色が決まり、オプションもあれこれ指示し、最愛の妹の(他に妹に見える弟が2人いる)作業着まで注文し、
『代金は家のほうに請求してくだしゃい。』と伝えて伝票にサインすると、
奥でお茶でもどうかという主人に丁寧に礼を言い、
『まだお店も決めなくてはならないので失礼します!』と元気に飛び出していった。
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