硝煙の香り

15/29
前へ
/252ページ
次へ
トールは通信が切れたのを耳だけで確認し、改めてライフルのスコープを覗き込んだ。 前線が、トールのいるビルの近くまで迫っていた。 それより、レッジャーノ・パルミジャーノの二人が見当たらないのが気にかかる。 直後、トールは背後からの殺気に気がつく。 ――ガガガガッ! とっさに横に飛ぶと、今までいた場所が蜂の巣になる。 「チッ…。」 小さく舌打ちすると近くの窓に飛び乗る。 ここは三階。 しかし逃げ道はちゃんと用意してある。 素早く雨水の配水管を掴みビルの壁に沿って跳ぶ。 一度、排気口に着地すると再度跳んで隣のビルの屋上に着地する。 すぐさま転がるようにして中へ入る。 その刹那、着地した地点がはぜる。 追って来ている…下へと続く階段を飛び降りながら、襟元の通信機を口元に寄せる。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加