硝煙の香り

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―――デパート3F――― 銃弾の雨の中、トールは階段から半ば押し出されるようにして三階のショッピングフロアに転がった。 なんとかここまで逃げおおせたが、もう逃げ場は無かった。 柱に背を預け、肩で息をするトールに階段から男の声が聞こえた。 「いひ♪鬼ごっこはおしまいみたいだな。」 つづいて女性の声がフロアに響く。 「あは♪チェックメイトだね。」 二人、男女一組。 並んでトールの5メートル前まで歩み立ち止まる。 トールは鬼気迫る目で彼らを見つめて。 左の男がライフルを肩に置き、右の女がサブマシンガンを肩に置く。 「おれがレッジャーノ。」 「あたしがパルミジャーノ。」 「「よろしく。」」 「……。」 なぜか勝手に自己紹介を始めた二人。 トールは今まで生きてきた中で、一番の微妙な表情を浮かべて呆然と眺める。
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