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やって来ましたお隣さん。さあ、インターホンを押そうじゃないか。
ドキドキしながらインターホンをゆっくりと鳴らす。すると、やや遅れたタイミングで「……はーい」というやや低めの女性の声が聞こえてきた。
「あ、お隣の家の者で高杉と申します。ご挨拶に伺いましたー。」
高杉。そう、高杉亮太が俺の名前。何の変哲もない、まるでギャルゲーの主人公のような名前だが俺は気に入っている。
少し待つと、「ちょっと手が離せないから、ムラサキが出て頂戴」と先程の声がまた聞こえてくる。それと同時に、少しずつ大きくなる足音が家の中から響く。
ガチャリとドアが開かれる。俺はそれまで、俺の人生が平凡であると微塵も疑わないで過ごしていた。しかしだ、俺は後にも先にもこの出会いが俺の平凡を非凡に変えたと思っている。
「結婚して下さいっ!!」
バタンと無情な音が目の前で響いた。いつの間にか動いていた俺の右手は、開かれた扉を反射的に閉めてしまっていたのだ。
しかし、閉じた扉は閉じられたままではいなかった。
「あなたの事が大好きで」
バタン
もう一度、俺は扉を閉める。……なんだろう今のは。これがいわゆる毒電波とやらだろうか。
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