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静かな空間に、俺達2人だけが残された。
紫は口を開かない。
当たり前だ……あんなあからさまなのを見てしまうと、やはりショックだろう。
紫の存在の消滅。
それは過言ではなく、文字通り消滅。
よく、誰からも認知されなくなるような展開を迎えるアニメがあるが……
それが目の前で起きるとなると話は別だ。
「凜子ちゃん……私がどこにいるのか分かりませんでした。」
痛いほどの沈黙に耐えられなくなったのだろうか。
いや、その悲しみから逃げるためか。
唐突に紫が話し出した。
「いえ、凜子ちゃんだけじゃありません。北島さんも気付いていませんでした……」
「紫、あんまり気にするな。」
「それどころか、話していたはずの私の名前まで……忘れていました。」
それは、紫の辛く苦しい独白。
消化したくないものを吐き出すかのように、紫は呟く。
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