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「……ねえ高杉、一体どうしたの?紫が悪化でもしたの?」
俺の様子を見て心配になったのだろうか、凜子が少し顔を曇らせる。
「昨日お見舞いの後に、やっぱり悪化したりしたんじゃ……」
「いや、そういう訳じゃないんだ。ただ気になるだけだからさ……」
嘘だ。
今、俺は嘘を吐いている。
少し暗くなってしまったムードを引きずり、俺達は学校に向かって足を動かす。
この沈黙が……何故かとても痛い。
それから逃げるように、俺はまた口を開く。
「まあ、またお前らも紫の見舞いに行ってやってくれよ。やっぱりあいつも喜ぶだろうしさ。」
そう明るめに言ったのだが、凜子からの返事は少し間があった。
「紫……?紫って誰……あ、ああ紫ね!うん、勿論行くわよ?」
また……またなのか?
紫が少しずつ……忘れられている……
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