0人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前にはなだらかな上り坂が続いている。
その両側には幾分寂れた様子の住宅が立ち並び、だけどそのどれも人がいる様子はない。
近くの住宅に近寄り、こっそりと庭から覗いてみた。ストーカーみたいな気色悪い行動だけど、今はむしろ誰かに見つけてもらいたいくらい、僕以外誰もいなかったんだ。
部屋のカーテンは閉められ、電気がついてる様子はない。だけど、庭の手入れはきちんとなされ、淡く色づいた花がみずみずしくそよいでいた。
なんだろう、この違和感。どこにでもあるような光景なのに、初めて外国に来たときのような戸惑い。
何も知らない、分からない怖さで、ここから動くことすら躊躇ってしまう。
空を見上げると、白に近い水色が視界いっぱいに広がった。
最初のコメントを投稿しよう!